健康保険の保険料や保険給付の額は、被保険者が受ける報酬額に基づいて決まります。報酬額は、月給や時給、日給、週休や出来高給など様々です。人によって毎月受ける報酬額が変動することも多いでしょう。受ける報酬額そのままの金額に対して、個別に保険料や保険給付の額を計算するのは非常に煩雑になります。このため、被保険者が受ける報酬を一定の範囲内の等級にあてはめることにより、保険事務を効率化しています。1等級(58,000円)から50等級(1,390,000円)までの標準報酬月額等級が定められています。例えば、給与の月額が245,000円の人の場合、以下の等級表にあてはめ、240,000円として保険料や保険給付の金額を計算することになります。月給者は計算が簡易ですが、時給者でフルタイムの人や、フルタイムの4分の3の時間で働く人の場合は、月の所定労働時間で計算して月額を求めた上で、標準報酬等級表にあてはめることになります。標準報酬の取り扱いは、健康保険と厚生年金で共通します。このため、標準報酬等級表は、健康保険料と厚生年金保険料が一緒になっています。
健康保険は、介護保険の対象者(40歳から64歳の者)について、介護保険料も加算されます。厚生年金保険料は全国一律ですが、健康保険料率は都道府県により差があります。毎年3月に保険料率が改定され、この標準報酬等級表も一新されます。給与計算を行う場合は注意が必要です。
報酬の定義も定めがあります。「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対象として受けるすべてのものをいう。とされています。
報酬に含まれるものとして、現実に提供された労働に対する対価に加え、給与規定等に基づいて使用者が定期的に支払うものは、報酬に該当するとされています。例えば、病気等で欠勤した場合でも、給与規定で有給の病気休暇の定めがあり、これに基づいて支払っている場合は報酬の対象になります。また、食事や住居の提供を受けている場合は、現物給与として報酬に含まれます。
一方、報酬に該当しないものとして以下の例が挙げられています。
・健康保険の傷病手当金、労災法の休業補償、解雇予告手当、内職による収入、家賃収入などの財産に基づく収入、適用事業所以外から受ける収入、出張旅費などの実費弁償、見舞金、結婚祝金など
報酬の定義に「労働の対象として受けるすべてのもの」と定められていますが、一部例外があります。労働の対象として受けるものであっても、常態として受ける報酬以外のものは除かれています。例えば、売上が大きく上がった場合、社員に還元する「大入り袋」などが該当します。
賃金や手当の種類は会社によって様々ですから、自社の給与規定をよく確認しておくことが重要です。「就業規則や給与規定に基づく」とされるのは、労働保険や社会保険の多くの場面で共通するものです。
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健康保険・厚生年金 標準報酬月額について、沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。社会保険について、アクティア総合事務所にお気軽にご相談ください。