社員が個人的な事情によって、会社から金銭の借り入れを希望することがあります。会社は、これに応じて貸し付けることは問題ではありませんが、労使間における金銭貸借関係については、一部規制があります。「前借金相殺の禁止」です。
労働者の身分拘束を防止するため、使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸しの債権と賃金を相殺してはならないとされています。社員にお金を貸し付け、返済する代わりに労働させることはできません。
一般的に、社員が経済的な事情によって会社から賃金を前借することはありえます。社員の希望で、翌月の賃金から前借分を差し引くことがありますが、これは「前借金相殺の禁止」の規定に違反するものではありません。ポイントは、「労働者の自己の意思、希望に応じて、前借分を控除することは問題ない」ということです。
会社の都合でお金を貸付けて労働を強いることや、転職を防ぐことを目的としてお金を貸し付けるなど、実態として労働者の身分拘束につながることが違法になります。実態として違法状態につながることのないよう、社員の意思による借入申し入れの書面を保管したり、会社に債務がある状態でも転職は自由であること、退職後の返済計画や誓約書の取り交わしなど、労使間における金銭貸借関係は、慎重かつ適切な管理が必要です。
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労働契約の規制 前借金相殺禁止について、沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。労務管理に関するご相談は、アクティア総合事務所にお気軽にお問い合わせください。