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執筆者の写真仲宗根 隼人

労務管理の基礎 労働時間とは

更新日:7月31日


労務管理の基礎 労働時間

 労働者が就労する中で、その行為が労働時間に該当するか、否かの判断は難しいことがあり得ます。労働することに対して関係法令の様々な規制が課され、使用者は賃金や割増賃金の支払い義務を負うことになりますから、労働時間の該当性判断はとても重要です。


 労働時間について定める労働基準法32条は、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」と規定しています。この「労働時間」とは、行政解釈によると「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう」とされています。


 この解釈に基づくにしても、働くことの環境や状況は様々ですから、判断は難しいこともあり得るでしょう。労使間で争いに発展した場合には、最終的には裁判によることとなります。労働関係の紛争で多くの裁判が行われていますが、労働時間に関する主な最高裁判決で、次のように示されています。


(1)三菱重工長崎造船所事件(H12.3.9)

 →業務外の活動である作業服着脱等のための準備時間が労働時間にあたるか争われた。

【判示事項】

 労働基準法32条の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めにいかんにより決定されるものではない。

 労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法32条の労働時間に該当する。


(2)大星ビル管理事件(H14.2.28)

 →仮眠時間が労働時間にあたるかどうかが争われた。

【判示事項】

 労働者が実作業に従事していない仮眠時間であっても、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているものであって、労働基準法32条の労働時間に当たる。


 他にも、労働時間に関する判例はとても多くあります。関係する判例を検索すると、労使において、労働時間に関する争いがいかに多いかが分かります。

 作業前の着替え、店舗前の清掃、終業後のミーティング、空き時間の仮眠など、一般によくあることです。指揮命令に該当しないか、明示していなくても実質的には命令と受け取られないかなど、労働時間管理には行政解釈や判例に留意する必要があります。


 例えば、終業後の清掃や終礼を、労働時間ではないとしていた場合です。たとえ日々において30分程度だとしても、長期間にわたるとどうでしょう。フルタイムの完全週休二日制で働く月給30万円の職員を例にしてみます。

 

300,000(月給)÷163.3(月平均所定労働時間)(365日-120(年間休日)×8÷12か月)

=1,837円(時間単価)


1,837×0.5=918.5円(30分相当の賃金)


918.5×1.25(割増率)×245(年間勤務日数)=281,290円(1年あたり未払い賃金)


 単純計算ですが、1年あたり30万円弱の未払いが生じている計算になります。賃金債権の消滅時効は3年(今後5年になります)です。更に遅延損害金も加算されますから、一気に高額になります。訴訟になると、その時間就労していた証拠を示すのは容易ではないと思いますので、話はそんなに単純ではありませんが、雇用管理上の大きなリスクであることは確かです。


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労務管理の基礎 労働時間とは。労働時間について、沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。労務管理は、アクティア総合事務所にお気軽にご相談ください。


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